過去問研究による仮説思考 ~受験生が難関大学に受かるための絶対必須の思考法~
今回の記事の趣旨はズバリ以下です。
難関大学に合格するためには、絶対に過去問から逆算した勉強をしなければならない。
これについては、確実に真実です。
なぜなら、難関大学は、過去問を忠実に研究してくる賢い学生以外の合格を、一ミリも願ってはいないからです。
1.積み上げ型の勉強で受かるという誤解
非常によくある誤解があります。
段階的に基礎を固めていって、徐々に一般的な中級、上級編の問題集を解き、気づいたら難関大学に受かるための実力を獲得している、それが合格へのルートなのだ
こういう誤解です。
部分的にこれは真実であります。特に、オーソドックスな問題、一般的によく聞かれるような問題しか出題しない大学については、上記の思考法で対応可能です。一般的な日本の高校のカリキュラムに沿った学習さえしていれば、オーソドックスな問題はある程度解けるようになります。オーソドックスな問題しか出題しない大学へは、何の戦略も立てずに、漫然と学校の課題や予備校の課題をこなしていれば受かるようになります。
しかし、難関大学になってくると話は違ってきます。
大学受験において、過去問研究が大事という話をあなたもよく聞くかと思いますが、これは相当程度真実です。
なぜなら、難関大学と呼ばれる大学の二次試験は、「しっかり過去問研究をして対策を練ってきた生徒」が受かりやすいようにできているいます。そして、難関大学自体が「試験問題に対してきちんと調べて、対策を検討してくる生徒」を熱烈に欲しがっているのです。
言い換えますと、過去問研究もせず、基礎から順に問題を解き、漫然となんの方針もなく難しい問題を徐々に解いていく勉強法、つまり思考を停止している勉強では、難関大学は受からないようにできているということです。
2.大学は対策をしてくる生徒を欲しがる
難関大学において、非常に偏った分野の問題や、特殊な問い方の問題を課してくる大学が多く存在します。つまり、その大学用の試験勉強をしておかなければ一生受からない大学が存在するということです。これは日本の大学受験をする上では、絶対に知っておかないとならない非常に重要な事実です。
東京外国語大学は超長文の英作文を課してきます。そのため、短い英作文ばかりを解いても一生受かりません。しっかり、長文での英作文を書く練習をする必要があります。
一橋大学の世界史も、単語を問う問題ではなく、その9割が論文の問題形式です。暗記だけの勉強をしていても一生受かりません。論文の問題を練習して、論文の書き方を身に着ける必要があります。
私大も同様です。早稲田大学のように、パラグラフごとの要約のような他の大学にない問題を多く課してくる大学もあります。早稲田のグラフ問題を説明する英作文など、グラフを説明する英単語や表現を知らなければ絶対に高得点をはじき出すことはできません。
あげればキリがありませんが、日本の難関大学の問題には、事前に対策しておかなければ安定した点数をはじき出すことが難しい問題が多く存在しています。これは純然たる事実です。その上に、こうした問題は、漫然と学校のカリキュラムに沿った勉強をしていても、ほとんど解けるようになりません。
日本の難関大学を志望するのであれば、その大学に沿った勉強をする必要性が絶対的にあるのです。
3.人類の歴史と課題解決
大学の役割を人類史の中でひも解いてみれば、どうして大学が上記のような出題をするのかのヒントになります。結論から言うと、大学は課題解決のできる学生が、喉から手が出るほど欲しいのです。
人類の産業と技術の進歩は、ほとんどにおいて課題解決による進歩でした。「〇〇を解決するためには、△△という課題がある」。こうした目的に対する課題解決によって人類は進歩を遂げました。
空を飛ぶにはどうしたらよいか。
早く移動するにはどうしたらよいか。
技術を後世に伝えるにはどうしたらよいか。
こうした目的について、逆算的な方法を持って人類は技術を発明してきました。「目的」と、それに対してクリアしなければならない課題を一つずつクリアしていった結果、技術は実用的な形となり、現代の私たちの生活を豊かにしているのです。
獲物を自分が危険に触れることなく倒すために、遠くから攻撃する必要があるという課題から、人類は弓矢を発明しました。
未知の状況で常に方角を図るために、持ちやすくつかいやすい道具を作る必要があるという課題から、人類はコンパスを開発しました。
大量の製品を生産するという目的のために、専門技能を持った大量の人手がなくとも、生産できる体制を作る必要があるという課題に対し、人類は蒸気機関を使った生産方式を開発しました。
人類の技術と産業の進歩は、だいたいにおいて課題解決の賜物なのです。
そして、人類史を発展させてきた人は頭の良いだけの人間ではなく、課題解決ができる人間なのです。
余談ですが、現代のビジネスや研究者の世界においても、成果の出せる人間が重宝されます。成果の出せる人間とは、「課題を解決することができ、物事を前進させる力を持
った人間」のことを指すことが一般的です。
4.課題解決のできる人間とは
存在する「課題」をしっかりクリアする頭脳と姿勢がある人間。これを具体的に言うと、適切な仮説を立てられる人間です。大学が欲しい人材とは、こうした適切な仮説が立てられて遂行ができる人材となります。
空を飛ぶには、人間には羽がないという課題がある。では、どういう翼があればよいか。「大きな翼があればよいのではないか」。それとも「しなやかで軽い翼があればよいのか」。
こうした、「〇〇があれば課題が解決できるのではないか」と考えることが、適切な仮説を立てるということになります。的外れなものではなく、適切な仮説が立てられなければ、課題を解決することはできません。
当たり前の話ですが、空を飛ぶための翼はどういう翼かという問いに対して、知識ゼロベースで論理的に答えを導き出すのは、ほぼほぼ不可能です。
それでは何が必要かというと、実際に「こういう翼ならとべるのではないか」という適切な仮説を立てて、実験をする必要があります。この実験結果を検証して、さらに次なる仮説を立てて、実験検証していった結果、「人類は軽くしなやかな翼で以て、助走つければ飛ぶに至る」という結論に達したのです。
4.大学の役割と欲しい学生像
大学に話を戻します。先ほども述べましたが、大学が欲しい人材とは、適切な仮説が立てられて遂行できる人材です。
こうした学生が欲しい理由としては、大学の役割に大いに関係があります。
大学の役割はなんでしょうか。
大学は学問を教える機関ですが、元々は研究者を養成する機関であり、主眼は概してそこにありました。大学は「研究をする環境である」ということをその存在の拠り所にしてきたのです。
大学は、人類の発展に貢献できるような研究者の養成をその目的としています。人類の発展に寄与できるとは、先ほど述べたように、ある目的(研究成果)に対して、適切な仮説を立てて課題を解決していける能力を持っている事に他なりません。
まとめますと、大学が欲しい学生像とは、人類の発展に寄与できる研究者の器を持った人材です。つまり、研究成果という目的に対して、存在する「課題」をしっかりクリアする頭脳と姿勢がある人間(じっくり仮説を立てて遂行していける人間)ということになります。
5.二次試験を通して欲しい学生像
以上を踏まえて、大学欲する人材は以下となります。
×適切な仮説を立てられない。課題を解決する能力がなく、その姿勢もない人間
〇適切な仮説を立てて課題解決を遂行する能力があり、その姿勢がある人間
これを受験にあてはめると、大学が二次試験を通して欲しい学生像は以下となります。
×課題(二次試験問題)を調べようともせずに、漫然と受験勉強をしている生徒
〇課題(二次試験問題)を入念に調べ、何が必要かを見極めたうえで、これをしたら受かるのではないかという仮説を立てて遂行できる生徒
さらに、大学が二次試験を通して、受かって欲しい人材像をより具体的にいうとこうなります。
(1)過去問(課題)をもとに、志望大学が一体どういう分野の問題を出すか。どういう出題型式かを見極め、
(2)一体どういう分野に勉強の焦点を絞るべきか、どういう演習方法に慣れれば受かりやすくなるか、といった仮説を立てることができ、
(3)上記(2)の中で自分に足りない物(苦手なもの)と得意なものを優先順位付けして、優先度の高いものから順次実行していく
すなわち、課題に対して、こうしたらクリアできるのではないかという思考(仮説思考)ができるかどうか、そこが大学が欲しい人材かどうかの分かれ目だということです。
(またできればゴール(目的)から順にやるべきことを下っていく思考(逆算思考)ができるかどうかも重要なのですが、これについては後日具体的な記事を書きたいと思います)
6.まとめ
長くなってしまいましたが、こうした、過去問から、問題クリアのための仮説を立てられるかどうかが受験勉強の成功を左右する必須の条件となります。そこを意識せずして成功は難しいと思います。どうか、今までそういった思考をしていなかった方は、意識して勉強に取り組んでみてください。
また、過去問研究において、自分一人で過去問を解いて研究して仮説を立てるのは、たしかに非常に骨の折れる作業であり、難しいことでもあります。そのため、私は「プラットフォームの威力 ~宅浪・浪人生が成功するためのツール~」でも説明していますが、過去問研究による仮説をすでに立ててくれているプラットフォーム(土台)をふんだんに利用することで、過去問研究にかける時間と労力を節約することができるのではないかと思います。
こうした過去問研究のためのプラットフォーム(土台)の一例としては私は大手通信衛星予備校の「大学別対策講座」を熱烈にお勧めしています。
以上、何か疑問点などありましたらいつでもメッセージやコメントにて連絡ください。
それではまた