受験勉強における情報過多と決断忌避 ~延々とスマフォで情報収集してしまう貴方へ~
1.ネットに氾濫する情報
最近ふと、思うことがあります。様々な受験勉強にまつわるブログを見ている時です。
「〇〇をすれば絶対に合格する!」
「〇〇大英語への参考書はこれ!」
「朝方勉強法の勧め!!」、
「休憩は〇分おきにとれ!!」
大学受験を乗り越え、その後も勉強を続け、ある程度ノウハウやコツなどをわかってきた私でさえネットの中の情報量の多さに辟易してしまいます。
さまざまな情報がネットの中には乱立し、あなたの注意を引き付けます。「英語は多読が最強!」「英語は音読で精読が一番!!」、結局何が正しいのかわからないのが多くの人の感想かと思います。
「もしドラ」で有名な経営学者、ピータードラッガーもこんな言葉を残しています。
「数百年後の人々がわれわれの時代を振り返るとき、歴史家の目に留まるのは技術やインターネットよりも、人々の状態が大きく変わってしまって事実だろう。歴史上初めて、大多数の人々が選択肢を持つことになったのである。ただし社会はいまだ、そのような事態に対応できていない。
(Peter Drucker, "Managing Knowledge Means Managing Oneself")
私たちは現在、情報という名の選択肢を、大量に手に入れることができる時代を生きています。
活版印刷技術の発明で、1つの原稿から大量の本を印刷することが可能となりました。それでも、本の運搬という輸送コストによって、情報伝達の速度は非常に限られたものでした。
しかし、インターネットの登場と、コンピュータ技術の台頭によって、情報伝達と情報複製がほぼゼロコストで可能になりました。情報を複製し、または作成し、伝えるコストがゼロになるということは、あらゆる情報があまねくネット上に氾濫する最大の理由の一つです。
その結果、私たちは、大量の情報を無料で手に入れることができていますが、その反面、あまりの情報の多さに非常に辟易しています。
2.大量の情報と選択疲れ
心理学の大著である「選択の科学」(シーナ・アイエンガ―/文藝春秋)でも紹介されていますが、人間は大量の選択にされされると、「選択疲れ」のようなものをひきおこし、大量のエネルギーを消耗する事がわかっています。
非常に有名な実験があります。ショッピングモールのスーパーにて、大量の商品を棚に入れた場合と、少量の商品を棚に入れた場合、どちらが顧客が商品を買う確率が上がるか、という実験です。実験の結果、少量の商品を棚に入れた場合の方が、商品を買う確率が高かったのです。
これは、大量の商品を目の前にすると、選択肢の多さからどれを買えばいいか悩んでしまい、結果として決断疲れを起こしてしまったからだという説明がついています。決断疲れの結果エネルギーを消耗してしまい、買うという決断にはいたらなくなってしまった、ということです。
上記実験が語るところは、人間は大量の選択肢を目の前にしてしまうと、逆に一つの選択肢の実行に絞れなくなる。ということです。
あなたが英語の長文の読み方を調べるところを想像してみてください。良く身に覚えがあると思いますが、大量の情報をネットから仕入れる事が出来た割に、「じゃあ結局どれをやればいいの?」という迷いが生じます。結果的に、どの勉強法も最終的に実行に移さないことが多くないでしょうか。ただ情報収集に時間を使ってしまい、自分自身の勉強法の改善に一ミリも結びつかない時間を過ごしていないでしょうか。
お分かりかと思いますが、情報収集によって大量の選択肢を持った人は、そもそも、選択肢を一つに絞ることは非常に難しいのです。この理由として、
・選択肢を絞るエネルギー自体を消耗してしまい、選択肢を絞り込む前にエネルギーを使い果たしてしまう
ということが挙げられます。
選択疲れにより、決断を全くしない状態に陥ることを心理学の研究では「決断忌避」と呼んでいます。
3.決断忌避を回避するために情報を取捨選択する方策
それでは、大量の情報をもとに、選択を絞り、実際の勉強法の改善をするにはどうしたらいいか。
私が思うに、エネルギーを消費する前に選択肢を絞り、これを実行することに全力を尽くすことが必要だと思います。
選択肢を早急に絞り、実行をすることに全力を傾けるには、私は以下のことが必要だと思います。
(1)あらかじめ、情報収集をする時間と、制限時間を決める
(2)情報収集をし、自分に有益そうな情報をメモしておく。
(3)事前に決めておいた「何を基準に、選択肢を絞るか」をもとに、選択肢を絞り込む
(4)必ず実行する。(紙に書いて見えるところに貼っておく)
まず、(1)あらかじめ、情報収集をする時間と、制限時間を決めるについては、エネルギーの消費を抑えるための方策です。制限時間が決まってさえいれば、エネルギーを消費しきる前に情報収集を切り上げることができます。つまり、決断忌避の状態に陥る前に、時間の制限を設けるのです。おそらくですが、漫然と情報収集に時間を使ってしまう人にとっては、制限時間を決めることが最良の方策となりうることかと思います。
そもそも、情報収集自体が目的となっており、改善行動をすることが目的ではない情報収集の時間を過ごしている方が圧倒的です。脳科学の研究においては、外部からの刺激は、悪い刺激、いい刺激に関係なく、脳にアドレナリンを分泌することがわかっています。つまり、人間は脳構造から言って、新しい情報にさらされることに強い快感を覚えるようにできているのです。これが、そもそも、貴方が気がつけばスマフォで情報収集してしまう理由です。
こうしたスマフォ中毒を避けるうえでも、情報収集に制限時間を設けることは非常に理に適っています。勉強の息抜きももちろん大切ですが、脳のアドレナリンに踊らされて延々とスマフォを見てしまう習慣はどこかで制限を設けるべきです。
さらに、(2)情報収集をし、自分に有益そうな情報をメモしておくことも忘れてはなりません。
人間の脳のワーキングメモリは有限です。その脳構造から言って、脳はさっきまでの情報を忘れることで新陳代謝をし、新しい刺激に対する準備をしています。これは、短期記憶の新陳代謝です。短期記憶に入っていた情報は、長期記憶への移管にスムーズに成功しない限りどんどん忘れていきます。特に、スマフォから得ている情報などは忘れやすいものです。
情報収集に制限時間を設けるのなら、有益な情報があったら、必然的に忘れずにメモする必要があります。今はスマフォにメモアプリがあるので、メモにコピーペーストでそのまま貼り付けるとよいでしょう。
3番目に、(3)事前に決めておいた「何を基準に、選択肢を絞るか」をもとに、選択肢を絞り込む必要があります。
個人的には、「無理なく実行可能か」、「今の自分の勉強法と適合するか」、「科学的な知見や、信頼できそうな人の知識か」などがあげられるるかと思います。これについては、別の記事で長めに書いてみたいと思います。特に、「信頼に足る知識かどうか」が、個人的には強い基準になるのではないかと考えています。例えば、「最先端の研究による根拠づけがなされているか」、「信頼できる先生が言っていることか」などでしょうか。正直、根拠づけのない知識はネット上にはごろごろ転がっています。中には、「何を根拠にその勉強法がいいって言ってんの?」と首をかしげたくなるような知識もあります。
(4)必ず実行する。(紙に書いて見えるところに貼っておく)
一度決めたら、それは必ず実行してください。そうしなければ、情報を収集した時間はすべて水の泡になります。改善に結びつかない情報収集の時間はすべて無駄だと心得てください。貴方の大切な時間を無駄にしないでください。スマフォで延々と実りのない情報収集をするならば、Youtubeでお笑いの動画をみたり、好きなサイトで暇つぶしをする方が、まだましです。その方が少なくとも情報収集よりはちゃんとした息抜きになるからです。
紙に書いて貼っておいてもいいです。人間は習慣の定着に平均66日間ほどかかるそうです。その期間持続して、自分が選択した勉強法を続ける必要があります。そうしなければその勉強法は身に付きません。その間、見えるところに実行することを張っておかなければ、すぐに忘れます。シンプルですが、見えるところに紙を貼っておくのは、目標管理などの記憶想起にとって大変効果的です。
4.まとめ
長々と書いてしまいましたが、結局のところつたえたかったのは、大量の情報に踊らされることなく、自分の中に制限と基準を設けて実行してください。ということです。
情報の取捨選択の基準については、いずれ記事内でしっかり書きたいと思います。
スマフォの情報収集に延々と時間を使って疲弊してしまうのは賢い受験戦略とは言えません。
そもそも、どれが正しい受験勉強で、なにが自分にとっていい勉強法かなんて、実行しなければちゃんとわかりません。科学的には良くても、えらい人が言っていても、自分に合わない勉強法だってあります。選択肢を絞って、きちんと実行して、そこでだめだったらまた勉強法を検討すればいいのです。悩む時間があったら、自分なりの基準で選んだ実行して、試行錯誤すること、これがスマートです。
このブログでも勉強法など紹介していきますが、決して妄信はしないで、自分で実際に確かめてみてください。
受験相談など、いつでもお待ちしております。
それでは